おかまつ動物病院【獣医師岳先生のベテナリー日記】2026年Spr…
〇健康を守るために大切な予防医療とは
~病気になってからではなく、病気になる前にできること~
動物は言葉で体調の変化を伝えることができません。元気そうに見えていても、実は体重変化、内臓の病気、口の中の異常、痛み、寄生虫感染などが静かに進んでいることがあります。予防医療はワクチンだけではなく、定期的な健康診断、栄養管理、歯周ケア、寄生虫予防、行動面の確認などを含む総合的な健康管理です。アメリカ動物病院協会(AAHA)/アメリカ獣医師会(AVMA)の犬の予防医療ガイドラインでは、予防医療は動物の年齢や生活環境に合わせて個別化されるべきだとされています。
〇予防医療は「年1回の注射」だけではありません
予防と聞くと、ワクチン接種を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんワクチンはとても重要です。ワクチンは犬の健康、寿命、生活の質を守る上で中核となる予防手段です。また、人と動物の双方に関わる感染症への防波堤としての役割もあります。
予防医療はもっと幅広いものです。動物病院では問診で生活スタイル・年齢・行動・食事を確認し、診察では身体検査に加えて歯周の状態評価、体型や筋肉量の評価等を行い、その上で病気、感染症、寄生虫、歯科、栄養、行動、年齢や犬種・猫種特性まで含めて総合的に判断することが大切です。
〇なぜ元気でも定期健診が必要なのか?
定期健診の重要性は、症状が出る前の変化を見つけられることにあります。例えば、体重の微妙な増減、歯周病の進行、関節の違和感、皮膚の変化、心雑音、腹部触診でわかる異常などは、飼い主様だけでは気づきにくいことが少なくありません。さらに必要に応じて、フィラリア検査、糞便検査、血液検査、尿検査、レントゲンや超音波検査などを追加することで、早期発見につながります。
ワンちゃんネコちゃんは少なくとも年1回は動物病院での診察を受けることをお勧めします。その子の年齢、体質、持病、生活環境などに応じて獣医師と相談して適切な受診頻度を決めていきましょう。
特にシニア期に入ると、短い期間で体調が変化しやすくなります。予防医療は単に年齢だけでなく、品種やサイズ、ライフステージごとに考える必要があります。つまり、子犬と成犬、シニア犬では、必要なチェック項目も受診の意味も変わってくるのです。
予防医療で特に大切な5つの柱
1. ワクチン
ワクチンは、感染すると重症化しやすい病気を防ぐために欠かせません。ワクチンにはコアワクチン、ノンコアワクチンがあります。コアワクチンとは生活環境に関わらずすべての犬が接種すべきワクチンとされ、ノンコアワクチンは暮らす地域環境や暮らし方などのその犬の感染のリスクに応じて接種すべきワクチンとされています。また、犬の場合は毎年1回狂犬病予防接種が狂犬病予防法によって義務付けられています。
2. 寄生虫予防
フィラリア・ノミ・マダニ・消化管内の寄生虫は、身近で重要な予防対象です。最近はSFTSというマダニを介したウイルス性の疾患が発生しています。SFTSは人獣共通感染症といい人間にも感染する病気です。近年SFTSに感染した動物を治療した動物病院関係者への感染が報告されています。また、特に猫においてはSFTSに感染した場合高い致死率が報告されています。フィラリア予防だけでなくノミ・マダニ予防も同時に行うことを推奨します。
3. 歯科ケア
歯周病はとても多い病気ですが、初期には見逃されやすいものです。口臭や歯石だけでなく、痛み、食べ辛さ、慢性炎症の原因になることもあります。ご自宅での歯磨きや必要に応じて動物病院での歯石除去を推奨します。
4. 栄養と体重管理
少しくらい太っている方が可愛いと思われがちですが、肥満は関節疾患、心肺への負担、糖代謝異常など、さまざまな問題につながります。毎日の食事内容の確認、体型と筋肉量
の定期的な評価が重要です。適切な体重管理は予防医療の基本です。
5. 行動と生活環境のチェック
予防医療には、問題行動の予防やストレス管理も含まれます。行動、環境、安全性、繁殖に関する配慮まで含めた包括的なケアが重要です。動物病院での診察は病気を探すだけでなく、より暮らしやすくするための相談でもあります。
〇予防医療は動物に合わせる時代へ
最近の予防医療は、すべての動物に同じことをするという考え方ではありません。その子の状態に基づいたカスタマイズが必要です。ワクチンの種類、受診頻度、寄生虫対策、検査内容、食事指導、避妊去勢や繁殖相談、マイクロチップの推奨まで、個々の犬に合わせて考える事が理想です。
例えば、室内中心で暮らす若い犬と、外出機会が多い犬、持病のあるシニア犬では、必要な予防は同じではありません。だからこそ、定期的に診察を受け、その時点の状態に合わせて予防プランを見直すことが大切です。犬種やサイズによって老化の進み方が異なるため、ライフステージに応じた予防が必要です。
〇予防医療は、結果として負担を減らすことにつながる
病気が進行してから治療する場合、犬への負担も、通院や治療費の負担も大きくなりやすいです。一方、予防や早期発見ができれば、治療が軽く済むことも少なくありません。予防医療はペットの健康だけでなく、生活の質を守るためにも重要です。健康で過ごせる時間を少しでも長くするために、予防医療は最も基本的で、最も大切な医療の一つです。
〇まとめ
犬の予防医療とは、単なるワクチン接種ではなく、定期健診、寄生虫予防、歯周ケア、栄養管理、行動面の確認、年齢や生活環境に合わせた個別の健康管理を行うことです。元気そうに見える今だからこそ、将来の病気を防ぐチャンスがあります。愛犬・愛猫がこれからも長く、快適に、家族らしく暮らしていくために、ぜひ予防医療を日常の一部として考えてみてください。



